家は理屈じゃねえんだよ

「パパ、そういえばサウナ付きの家あったよ」

風呂上がり、妻から聞いたこの一言がすべての始まりでした。

僕が家を欲しくなってしまった、そして家族が家を欲しくなってしまった話です。

初めて家を建てる、というイベントはもう一生ないから、せっかくなので赤裸々な感情やプロセスを残しておきたいと思います。

 

誰でも一度は、一軒家に住みたいと思ったことがあるはずです。子どものころから一軒家で育ったとか。あるいは小さいときに友達の家へ行き、でっかい窓や立派な庭をみて「いいなあ」と思ったことがあるはずです。

かくいう僕も、その一人でした。

田舎で育ったから、庭で焼肉をするのが普通でした。弟や親父とキャッチボールをしました。親戚んちもそうだったから、自分も家を買うもんだと思ったまま大人になりました。

でも現実はちょっと違っていました。

僕はファッションの仕事がしたくて、22歳のとき田舎から札幌に出てきて。好きなことをやった結果、手取りは15万円で。このまま会社にいてもやりたいことは出来ないと悟って、自分でビジネスを始めました。

起業してなんだかんだ9年目になり、今も札幌に住んでいます。札幌駅からクルマで15分の、まあまあいい位置です。

結婚しました。子どもが生まれました。都会に慣れました。いつの間にか、僕のなかの家は「マンション」になっていました。

都会ではマンションが普通だから。家を買うのは別にいっか、と思うようになりました。人間の常識なんてそんなもんです。

こないだまで「会議だ!打ち合わせだ!」なんて偉そうに時間を潰していたおじさんたちも、ちょっと時代が変われば自宅でテレワークです。人間の常識なんて、そんなもんなのです。

 

そんなこんなで、僕の心からマイホーム願望はすっかり消えていました。消えたと思っていました。

でも今、家を買おうとしています。

だって建てられそうだから。サウナ付きの家が。

ここに来るまでたったの2週間。マンションでいいやと思ってた奴が、2週間で家を買うことを決めました。会社のお偉いさんたちがZOOMの使い方を覚えてるうちに、家を決めることが出来るわけです。

ローンの仮審査に出す書類がひと段落したので、気分転換も兼ねて裸の心を書きます。

 

僕ら家族は、インスタで人生が変わりました。

なんとも胡散臭い主張で、なにそれ?バカなの?と思われるかもだけどガチです。

というのも、妻が「サウナ付きの家」を見つけたのがインスタの広告だったのです。僕自身がコピーライターとして働いている背景もあり、これは地味に嬉しいポイントでした。

だって考えてみてください。

展示場にモデルハウスを建てているとか、テレビCMに莫大な広告費を突っ込んでいるとか。従来の集客方法のみだったとしたら、僕らが興味をそそられる機会は訪れませんでした。無論「家を買おう」とは100%なってないわけです。

数千万円の買い物をするのだから、決断の言い訳は多いに越したことはありません。運命だと思えるような要素はナンボあってもいいのです。その1つ目は、間違いなくインスタの広告でした。

 

インスタで見つけた広告からホームページに飛んでみると、ちょうど1年ほど前にできた会社で。これも僕としては嬉しいポイントでした。

なぜか。実力を信用できるからです。

ひとによっては、社歴が浅い会社に家を頼むのは不安かもしれません。ながい付き合いになるものだから、アフターケアを考えて実績がある会社にしよう!と考えることに何の異論もありません。

でも今、2022年です。

世間は謎のウイルスのおかげで娯楽が減り、心まで侵略され、ついには高梨沙羅ちゃんのメイクにまで口を出し始めるほど疲れてます。普通ならば、挑戦心なんてとっくにへし折られている2022年です。

覚えてますよね?1年前はもっと悲惨な状況でした。よほど自信がなければ、こんな時期に事業を起こすなんて考えもしないでしょう。

 

案の定、社長さんは大きな会社で実績を重ねた方でした。

やりたいことが今の会社では出来なくて立ち上がったんだろうな。そんな情熱に呼応した少数精鋭の皆さんも、きっと何かに一石投じてやりたかったんだろうな。

勝手に想像し、熱いものを受け取りました。家を見にいく前から、惹かれるものがたくさんあったのかもしれません。

 

ちなみに、自分が10年ちかく個人で生きてきた中で1つ確かなことがあります。

胡坐をかいている大企業よりも、駆け出しのベンチャーのほうが一生懸命だということ。その姿勢の差が、パフォーマンスに大きな影響を及ぼす場面は何度もみてきました。

前者は効率を求めなきゃいけない。だから合理的になる一方で個性を失います。

後者は期待を超えなきゃいけない。スタートでミスったら次はないから必死です。

スポーツ選手なんかもそうですよね。ダラダラ走ってるベテランより、フレッシュなルーキーの活躍を見たくなったことありません?

どちらが優れているとかは、どっちでもいいです。ただ僕は後者のほうが好きだし、応援したいだけの話です。そういう意味でもこの出会いは嬉しかったなと、いま書いていて気づきました。

もう一度言います。

デカイ買い物をするのだから、運命だと思えるような要素なんてナンボあってもいいのです。

 

はじめて内見にいく日の朝、6歳の長男とこんな会話をしました。

「家たてるとしたら、どんなのがいい?」

『え?ぼく家なんていらない。だってこの家が一番いいから!』

ずいぶん利口な回答をかわいく思いつつ、長男の言葉に納得しました。僕もべつに、今の家に不満があるわけではなかったから。数年前に買った3LDKの分譲マンションは、立地も良いし風呂もデカイし気に入ってます。

息子も満足していることを微笑ましく感じながら、

「そっかー!まあ、せっかくだから見に行こうや」

なんて言いながら家を出発しました。

移動中の車内では、2歳の次男が「うっせえわ」を大声で歌っていました。ガチでうっせえのだけど、めんこかったです。彼なりに心が躍っていたのでしょう。

 

モデルハウスに着いて扉を開けると、営業のTさんが出迎えてくれました。どっしりとした体格ながら優しい雰囲気で、まだ人見知りの2歳もとりあえず「こんちわぁ」と言えました。

名刺をいただいて家のなかへ。このとき安心感を覚えたのは、いきなりスペックの説明をしなかったTさんのおかげです。

 

さかのぼること1ヶ月ほど前、最近マイホームを建てたイトコとこんな話をしました。

「そういえば、ハウスメーカーって元々決めてたの?」

『最終的には今の会社に頼んでよかったんだけど、ホントは最初違うところにしたかったんだよ。○○で決めようと思ってたのに、いざ予算の話になったときに一悶着あってね。』

「なしたの?」

『金額を盛った予算を持ってきたのさ。で、別の会社だとこのくらいですって話をしたら、そこまで下げますって。じゃあ最初からそれで持ってきてよと思って一気に萎えちゃった』

温厚なイトコが怒るのは珍しいので驚いた一方で、ああ、それはマジで嫌だな、と思いました。

あのころは家を建てる気はなかったけど。打ち合わせとか色々あることくらいはわかります。担当の方や依頼する会社を信用できなくなったら、長丁場の家づくりなんて乗り越えられるはずがありません。

探り合い、誤魔化し合い、互いに自分の利益だけを押し突けるような茶番は絶対にしたくないなと。

そんな話を聞いてたもんだから、営業さんとのフィーリングみたいなものは超重要だと思っていたのです。

 

結果、Tさんは得体のしれない警戒心を見事に取っ払ってくれました。

まず自由に家のなかを見せてくれたあとで、素人でもわかりやすい説明をくれて。ともに働くスタッフさんの紹介には自信がみえました。翌日には自宅に御礼のハガキが届き、次の内見の朝には「気をつけていらしてください」とメッセージが届きました。

連絡がテキトーな人は仕事もルーズだから、すごく嬉しかった気遣いです。

家のなかにある立派なサウナをみて、夢が膨らんだ僕の気持ちを知ってか知らずか。リビングにいた長男は、ヨギボーでゴロゴロしながらこんな言葉を発しました。

『ぼく、この家に住みたい!!』

そう。子どもの心なんて、一瞬で変わるのです。見事なまでに簡単に手のひらを返すのです。

90分ほどの内見で180度考え方が変わった息子をみて、この子たちにもっといろんな体験をさせてあげたいと心底思いました。

 

ちなみに、僕がTさんに好感を抱いた理由はもう1つあります。

『すごく失礼な話になっちゃうんですけど、井上さんの会社の決算ってどんな感じでしょうか…?』

一言一句覚えてはないけど、もう帰るか〜ってタイミングで、さりげなくこんな質問をもらいました。このひとはデキる人だなと思いました。前向きな話をこの先何回したところで、僕が買えそうになかったらお互いに時間の無駄だからです。

聞きにくいこと・言いにくいことを上手に伝えられる人、すごく好きです。

ちなみに、さっきもTさんから電話をもらいました。昨日連絡したばかりの土地を、今日現地まで見に行ってくれるって凄くないですか?

 

内見の翌週、別のモデルハウスにお邪魔しました。

ついでにお伝えすると、この翌日にはまた別の家を見せてもらってるので、僕らの「家熱」が怒涛の勢いで加速していることがわかります。

一方で、妻は慎重な姿勢も併せ持っていました。

そりゃあそうです。なんせ、家に対する知識がほぼ皆無です。そもそも買おうと思ってなかったから、話題にあがったこともほとんどありません。

にも関わらず、いま検討している家がまあまあ型破りなのです。

サウナが付きます。バルコニーもあります。ジャグジーも付けられるっぽいし、どのモデルハウスを見に行っても抜群にシャレオツでした。

『めっちゃいいけど、本当にいいの?もっと他も見てもいいんじゃない?無難なほうが飽きないんじゃ・・?』

そんな感情を抱いていたことは想像に難くありません。

当然、似たような気持ちは僕にもありました。そもそも買おうと思ってなかったのが欲しくなってるし、色々わけがわからん状態になっていました。ポケモンで言うなら「こんらん」です。下手すりゃ自分を攻撃するかもしれません。

 

親がそんな状態にあるとは知るわけもなく。2人の息子たちはハシャギまくっていたわけですが、2回目の内見ではもう一人の営業・Iさんも同行してくれました。

結論から言うと、このIさんもまた、僕らの決断を大きく後押ししてくれるキーパーソンになります。

『はじめまして、今日ご一緒させていただくIと申します』

チェック柄のスタイリッシュなスーツに身を包んだIさんは、僕らふたりに名刺をくれました。このとき上手にいなしてくれたものの、ぶっちゃけ横にいる息子たちはうるさかったと思います。ごめんなさい。

iPhoneでYouTubeを流し、息子たちを少し落ち着かせたところで色んな話をしてくれました。

家づくりのこと、土地のこと、ご自身の経歴、家を建てるまでの流れ、、どれもプロフェッショナルで、専門家の話はすごく興味深かったです。

またTさんは1回目のとき少し話した程度の情報で、僕らが希望する地域の土地情報をしこたまプリントアウトしてきてくれました。ふたりの対応になんとも言い難い安心感が生まれました。

 

そしてIさんと、こんな会話をしました。

「なかなか攻めた造りだから、惹かれる人と躊躇する人が分かれそうですよね?」

『正直それはあると思います(笑)ただ井上さんもまだ小さいお子さんがいらっしゃるじゃないですか?そういう方には僕、こういう家ってすごくおもしろいと思っていて。』

「へー・・?すいません、どういうことですか・・・?」

『いわゆる「普通」じゃない家で育った子が、大人になったときって多分普通じゃない発想ができるんじゃないかと思うんです。世間一般でいう家なら、サウナはないですし(笑)好きなことを実現できている親も一握りのはずです。

そういう環境で大きくなった子どもは可能性も広がるし、大人になって一人暮らしをしたりするときに気づくと思います。ウチの親、すごいんだなって。そうしたらまた実家に愛着も出ますし、大人になっても帰ってくるきっかけになるかもしれないですよね!』

頭のてっぺんから電流が走りました。なんだか嬉しくて泣きそうになりました。

この1週間「一軒家VS賃貸」みたいな動画を見ては、損得の話ばかりで辟易してたからです。家への願望がいきなり高まったもんだから、もうちょい肯定してほしかったのかもしれません。

家を建てるなんて浪費だ、という理屈はわかるけど、うるせえよ。みんな欲しくなっちゃってんだよ。

 

家は、理屈じゃねえんだよ。

 

うまく言語化できなかったフラストレーションを、Iさんはぜんぶ吹っ飛ばしてくれました。

このあと、妻からも家に関する話が増えました。土地のこと、間取りのこと、彼女も明らかにこの短期間で家が欲しくなっていました。

結婚生活9年。僕がアパレル販売員でクソ貧乏だったときも、起業して時間に追われてるときも、なにも言わず支えてくれた妻が、今回ばかりは前のめりなのです。

はじめて何かを欲しがった妻と、ここに住みたいと言った長男と、うっせえわを大声で奏でる次男と。

僕のサウナ欲も含めて、いつの間にか我が家は後戻りできないところまで来ていました。

僕らの心は、あの日あの瞬間に決まったかもしれません。

大人になっても帰ってきてほしいもんな、実家に。

 

最近ふと考えるテーマがあります。

曲がりなりにも夫として、父親として、一人の男として、自分はなにを残せているんだろう?ということです。

いま35歳。いつ死んでも後悔しないように生きてきた反面、なにか残せたのかは甚だ疑問です。

 

ウチの母は3年前、62歳で天国に逝きました。

健康に気を遣うひとでした。自分よりも人を大切にするひとでした。それでも最期は、突然に訪れました。

あれ以来、漠然とした想いが胸にあります。

 

ーーオカンのように、俺も家族や周りにたくさん残せる人間であろう。

 

なんとなく思っちゃいたものの、どうすればいいのかはぶっちゃけ何も見えてませんでした。

だから、ひょっとしたら、家づくりの始まりは必然だったのかもしれません。わかりやすく「家族が笑える場所」を残せるのは、自分としても誇らしいことなのかもしれません。

不思議なもんで、いざ建てると決めたら、建てる理由を探し始めますね。

 

あ、

そうそう。ここまで読まれた方は、ひょっとしたら「家」に興味があったり、リアルタイムで何か挑戦しているかもしれません。いわゆる普通の家とは、やや違ったこだわりを持っているかもしれないですね。

もしそうだとしたら、ちょっと考えてみてください。

あなたが何歳かわかりませんが、仮に35年、これから建てる家に住むとしましょう。

35年って何日かわかりますか?

単純に365日で計算すると「12,775日」になるんです。1万日という単位がよくわからないけど、長い付き合いになることは間違いありません。

40年になったら、14,600日。とりあえずスゲエ長いです。

そのスゲエ長い期間を、妥協した家でいいのかって話です。

 

僕は最初にこう書きました。

「マンションでいいやと思ってた」

もうなんとなくお分かりでしょう。マンションでいいや、は、本当はマンションじゃ嫌なのです。マンションが大好きでたまらない人は「マンション”が”いい」と言うはずなのです。

普通に賃貸を好むのならば、そのままで構いません。多くのユーチューバーも賃貸を推してます。ある程度お金も勇気も要ります。誰でも家を建てたらいい!とは1ミリも思いません。

ただ、もし胸の奥にマイホーム願望があったり、ちょっと普通じゃない家がほしいのなら、検討してみてもいいんじゃないでしょうか。自慢げに我が家に友だちを招く子どもたちを想像すると、よくわからん力が湧いてくるものです。

 

というので、さいごにひとつ。

もしかしたら何かのきっかけになるかもしれないので、胸に手をあてて考えてみてください。

僕はこれを自分に問いかけたとき、絶対無理だし死ぬほど嫌だと思いました。

 

 

「キミは、ただの無難で満足できるか?」

 

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